肩こり腰痛もう悩まない!鍼灸師が教える肩こり腰痛からの解放メソッド

 肩こり腰痛を改善するためには、基礎知識として“痛み”について知る必要があります。ネットにあふれる不確かな情報や他人からの無責任な言葉に頭が混乱し、不安、焦りを増幅させネガティブな感情に支配されるのを防ぐことが目的です。これは、痛みや“こり”などの不快感は脳で感じ取っているという絶対的な事実があるからこそ知識が重要なのです。

目次

1.痛みの定義
2.肩こり腰痛のメカニズム
3.慢性痛を理解する
4.悪循環の理由
5.具体的な改善方法
6.セルフケア

痛みの定義

「痛みは不快な感覚及び情動(感情)体験である。」

 国際疼痛学会では、このように定めています。情動とは怒り、焦り、不安、悲しみなど短期的な感情の動きです。痛みは常に脳が関与し、主観的であり他人と共有することができない、あなただけの感覚なのです。

肩こり腰痛のメカニズム

 日常生活の中で、デスクワーク、長時間の姿勢の維持、重い荷物を持って歩くなどで筋肉が疲労すると、筋肉中の血流が阻害され柔軟性が低下し筋繊維が硬くなったり、傷ついたりします。その情報が神経線維に伝わり、脊髄から脳に伝達されます。すると脳からの指令により、受傷部位の範囲を拡げないようにするため、筋肉をさらに硬化させ身体を守ります。

 これが筋肉の局所的に硬くなった状態、すなわち“こり”です。硬くなっているのでスムーズな伸び縮みができず、不規則な細かいけいれん(スパズム)を起こし痛みが増悪します。外力により骨格のゆがみ・ズレが起こることもありますが、痛みの原因にはなりません。また神経が圧迫されても痛みは出ません。圧迫された場合、出現するのは痛みではなく麻痺です。

慢性痛を理解する

 持続的な外力にさらされて生じた肩や腰の痛みが、3か月以上続く場合を慢性痛といいます。痛みの情報が脊髄から脳へ長期にわたり絶えず入力されるので、悪い状態を覚えてしまうのです。脳に記憶された痛みと言えます。そこへ不安、怒り、焦り(イライラ)などの情動や不眠、ストレスなどが複雑に加わり、常に重苦しい痛みや不快感が続く状態に陥ってしまいます。

 近年の研究では、期間よりも障害の発生機序が重要視されています。神経質すぎる性格や細かいことを気にする人、こだわりが強い完璧主義者、恐怖・不安を抱きやすい人、いつも緊張している人などは急性期から慢性痛と同じような症状を呈する傾向にあり、非常にやっかいです。

悪循環の理由

 痛みや不快感により脳がストレス状態に置かれると、痛みに対する感受性が増します。線香の煙に火災報知機が反応してしまうような状況です。そして痛みに対する恐怖心から自然と体に力が入り、自ら筋肉を緊張させた状態にしてしまいます。さらに交感神経も緊張し、血流が悪くなり痛みのスパイラルから抜け出せなくなります。

具体的な改善方法

 セルフケアについては、慢性疼痛ガイドラインに基づき有用性がある程度証明され、尚且つ推奨度の高い順に紹介しています。ただし効果には個人差があり万能なものはありません。複数を組み合わせたり、その日の体調、環境、天気、スケジュールに合わせて選択し、根気よくチャレンジしてください。また医療機関と併用する場合でも、セルフケアで症状をコントロールする方法を身に着けると、医療費の抑制につながり無駄な出費を減らすこともできるので積極的に行うようにしてください。

セルフケア

1運動(有酸素運動)

 ウォーキングなどの有酸素運動をある一定時間続けると、脳内ホルモンが分泌され、高揚感や多幸感により痛みや不快感が軽減されます。ランナーズ・ハイと呼ばれる現象です。ポイントはマインドフルネス(今この瞬間に集中し、雑念を振り払うこと)です。

 また自律神経の調節にも役立ちます。持久力を高めることが目的ではないので自分のペースで行います。15分以上行ってください。瞑想やヨガ、ハグにも同様の効果が得られると報告されています。

2運動(エクササイズ)

 筋肉を鍛えるよりほぐす、体を伸ばすより動かす、安静より活動、緊張よりリラックスに主眼を置きます。これは筋肉の緊張緩和、血流の改善、ストレス解消が目的です。

肩こりエクササイズ1(首から肩甲骨上部がこる場合)

 肩甲骨を大きくリズミカルに回旋させます。往復10回。

 最初のうちは背中に疲労感が出ますが、慣れるとすっきりした感覚が得られ即効性の高いエクササイズです。

肩こりエクササイズ2(肩の一番高いところ“僧帽筋”がこる場合)

 肩をすくめる動作→弛緩を10回繰り返します。

 最大限にすくめ、弛緩するときは完全脱力してください。

肩こりエクササイズ3(肩甲骨まわり全体がこる場合)

 マエケン体操。立った状態から体を前傾させ、肩甲骨から腕全体を回旋させます。高度な動きですが非常に有効です。五十肩の予防にもなります。左右10回。

腰痛エクササイズ1(前にかがむと痛みが出る場合)

 仰向けで膝を立て、左右に腰をひねります。往復10回。

 ひねる角度は、痛みが出ない程度で行います。腰、臀部がほぐれ血流が改善します。

画像元:グランツホームページ

腰痛エクササイズ2(前にかがむと痛みが出る場合)

  体育座りの姿勢のまま、床に背中がつくように転がりまた戻ります。

  往復10回。背中、腰の緊張がほぐれ、リラックスできます。

腰痛エクササイズ3(後ろに反らすと痛みが出る場合)

 4つ這いになり、おへそを覗くように背中を丸める。次に顔をあげ背中、腰を痛みが出ない程度に反らします。往復10回。腰背部、腹部の緊張を和らげます。

画像元:サントリーウエルネスOnline

肩こり腰痛兼用エクササイズ1

 脊椎に負担のかかる猫背の改善にも役立ちます。

 椅子に座り、頭の後ろで手を組み胸を張ります。その状態のまま体を左に捻り5秒キープし元に戻り反対も行います。往復3回。

画像元:くるめ接骨院

肩こり腰痛兼用エクササイズ2

 ストレッチポールに仰向けに寝て脱力します。重力により疲労している背面の筋肉を解放します。

 猫背の改善にも期待できます。

デスクワーカー向けエクササイズ

 座りっぱなしの時間が長く、筋肉の60%以上を占める下半身が動かせないため、血流が滞り代謝も低下します。その状態が長く続くと、肩こり腰痛さらには糖尿病やうつ病などの誘因になります。作業時の姿勢は軽く背筋を伸ばし、デスクに前腕の半分くらいを乗せ、尚且つ肩が上がらない高さに椅子を調節すると腕の重みを分散できます。そして少なくとも1時間に1回は席を立ち、トイレに行くなど歩くようにしてください。

全身の血流改善用

 踵立ち、つま先立ちをリズミカルに往復10回繰り返します。 第2の心臓と呼ばれるふくらはぎのポンプ作用で全身の血流が滞るのを防ぎます。 

画像元:筋肉研究所

腰痛用

 椅子に座り背筋を伸ばし、右足を組むように左膝上あたりに置きます。そこから体を前に倒し、また戻ります。往復10回。逆側も同様に行います。腰、臀部の緊張を和らげます。

画像元:mi-mollet

腰痛用

 椅子に座り、おへそを覗き込むように腰から背中を丸めます。

 次に胸を張るように腰を前に反らせます。往復10回。リズミカルに行います。

画像元:メディエイトホームページ

肩用

 椅子に座ったまま、手の指先を肩関節あたりに置き、肩の前回し10回行い、次に後ろ回し10回行います。この時に肩甲骨から大きく動かすように意識してください。

画像元:ピンタレスト

3認知行動療法

  人により物事の捉え方や思考が異なります。肩こりや腰痛などの慢性痛があると、痛みのため悲観的になり身体活動に対して消極的になりがちです。そこで思考や行動の癖を把握し良い方向へ修正することで、活動的な心と体を取り戻し不安を無くすことを目指す心理的な手法です。元はうつ病の治療として開発されましたが、今では慢性痛の治療にも応用されています。

Ex.腰が痛くて動くことができない      痛いけど少し動いてみよう
(という思い込み、認知の癖)      (いつもと思考の癖を変えて) 
       ↓         ⇒         ↓
  仕事を休んで寝ていよう         思ったよりも動けるな
       ↓                   ↓
  腰痛は一生治らないのかな      大丈夫そうだ、運動もしてみよう

画像元:ウィキペディア-認知行動療法

4セルフマッサージ

 痛む部位(圧痛点)をテニスボールなどでほぐします。やりすぎて、筋肉を傷つけないよう注意が必要です。1か所10分くらいが目安です。

 マッサージチェアも有効ですが、うまく痛む部位(圧痛点)に当てることが重要です。セルフマッサージ同様に、やりすぎないよう時間と強さを加減してください。

画像元:美LAB.

5温熱療法

 痛む部位(圧痛点)へ、ホットパック、ホッカイロ、せんねん灸などで温めます。

 目視で腫れていなければ、冷やすよりも温めることで筋肉の緊張緩和、痛み、不快感を軽減する効果が期待できます。

6睡眠

 アメリカの民間調査会社の報告によれば、慢性痛患者の約半数が不眠に悩まされているといいます。眠気があると痛みを感じやすく、逆に眠気がなく覚醒した状態だと痛みが軽く感じるのです。痛いから眠れないのではなく、眠れれば脳がリフレッシュされ、痛みが軽減することが明らかになっています。

~睡眠の質を上げるために~

・アルコールを控える

 アルコールは眠気を誘いますが、浅い眠りが続き中途覚醒をまねきます。

・夕方以降、カフェインを摂取しない

 カフェインによる覚醒作用は5~6時間持続します。就寝時間から逆算して飲むようにしてください。

・就寝前にパソコン、スマホを見ない

 スクリーンの放つブルーライトは、目を刺激して脳を興奮させてしまいます。就寝1時間くらい前からは見ないようにしましょう。

・休日に寝だめをしない

 体内時計のリズムが崩れ、翌日以降の睡眠に影響をあたえます。遅くとも平日の起床時間から1時間以内に起きるようにしてください。

<医療機関で行うもの>

・トリガーポイント療法

 痛みが最も過敏になった場所、それがトリガーポイントです。筋肉や筋膜、腱に多く発生します。痛みを感じ取る受容器が体の異常信号を受け取り、脊髄を介し脳に到達すると痛みとして認識されます。トリガーポイントは脳にアクセスしている有力なポイントの1つです。そこを抹消部分(筋肉、筋膜、腱)で解消し、脳に異常信号が到達するのを防ぎます。

 トリガーポイントへ鍼、灸、マッサージを行います。

・局所麻酔

 整形外科、ペインクリニックでトリガーポイントへ薬剤を注射する手法です。興奮した神経を鎮めるのに有効です。日本では、局所麻酔薬を主剤とするネオビタカインが 最も使用されています。

画像元:いがらし整形外科

・投薬

 慢性の痛みの治療には鎮痛薬と鎮痛補助薬の2種類が使用されます。鎮痛薬は痛み物質を抑えたり、痛みを感じる神経を抑えたりすることで痛みを治す薬です。鎮痛補助薬には抗うつ薬や抗てんかん薬と呼ばれる薬が含まれていますが、うつ病やてんかんを治す  わけではなく、鎮痛薬と組み合わせることで痛みを抑える効果が得られる薬です。

<医療機関の選び方>

 慢性的な肩こり腰痛は、筋肉から発生しています。ですから骨格矯正や整体などの骨にアプローチする方法は避けたほうが無難です。また慢性痛は単なる肉体的問題だけでなく、家庭の問題、職場への不満、経済的な不安など社会心理的な要因が複雑に絡み合った状態です。個人差はありますが、非常に頑固で治療期間も長くなる傾向にあります。そのことを十分に理解して患者の気持ちに寄り添ってくれる医療機関を選ぶことが大切です。重要なのは医療技術や方法論ではなく人です。心から信頼できる人を選ぶと良い結果が得られやすいです。

この記事を書いた人:

若月隼

 小学1年~大学まで野球部に所属。

 2005年に鍼灸師免許取得後、日本オリンピック委員会医科学スタッフ、整形外科、脳神経外科に勤務し、その後、都内で鍼灸院開業。

 現在は鍼灸院での治療業務の傍ら、アスリートから一般の方に向けたフィジカルトレーニングの指導も行っている。

 趣味はスポーツ観戦と食べ歩き。