
肩こりや腰痛は、日常生活の何気ない動作や姿勢などで様々な原因でおこります。厚生労働省の国民生活基礎調査でも、日本人の訴える症状として、肩こりと腰痛が上位となっており、多くの人が悩みを抱えています。今回は、肩こり・腰痛がなぜおこるのか、そのメカニズムについてご紹介したいと思います。
目次
1.肩こりとは2.肩こりの原因
3.腰痛とは
4.腰痛の原因
1.肩こりとは
首から背中の上部、肩から上腕にかかわる筋肉の鈍い痛みや圧迫感、違和感、不快感をひとくくりにして肩こりと言います。肉体的、精神的なストレス、自律神経の乱れなどによる方周辺の筋肉の緊張と血流不足が原因です。
肩こりに関係している筋肉として代表的なものは、僧帽筋、頭半棘筋、肩甲挙筋、棘上筋、菱形筋などがあり、これらの筋肉が緊張して疲労してくると、硬くなり血液の循環を悪くしたり、末梢神経を傷つけたりして、こりや痛みを引き起こします。
2.肩こりの原因
肩こりの原因はさまざまです。ここでは大きく2つに分けて説明します。
(1) 日常生活から考えられる原因
①姿勢が悪い
猫背などの姿勢をとっていると、重い頭を支える肩や背中の筋肉が緊張し、血行不良となり肩こりがおこるといわれています。
日頃から意識して胸を張る、腰を伸ばすなど正しい姿勢を保つようにしましょう。
②同じ姿勢でのデスクワーク
近年ではIT化が進み、仕事がパソコンでの作業の方も多いと思います。同じ姿勢で長時間パソコンに向かっていることで、首や肩周辺の筋肉に緊張が続き、肩こりの症状が引き起こされます。
定期的に肩回りの軽いストレッチをすることで、筋肉の緊張が解消され、症状が軽減することがあります。
③眼精疲労
パソコン、携帯電話などを長時間見続けたり、合っていないメガネをコンタクトレンズを使用することで、目が酷使され慢性的な目の筋肉の緊張や疲労から肩こりの症状が引き起こされます。
画面を見る時間を短くしたり、時々1~2分ほど目を閉じて目を休ませることが大切です。また、メガネやコンタクトを合うものに変えるなどの対策をしましょう。ビタミンB群が眼精疲労の改善に効果があるといわれているので、積極的に摂取するようにしましょう。
④運動不足による筋肉疲労と血行不良
日常的に運動不足の場合、筋肉の緊張や疲労がおこりやすく、また、筋肉が使われないことで、血行不良となり、肩こりの症状が引き起こされます。さらに、筋力が低下することで、体が重力に抵抗できなくなり姿勢が悪くなることも考えられます。
運動は筋力を増強するだけではなくて、血行をよくする効果もあるので、定期的にウォーキングやストレッチなどの有酸素運動を行いましょう。特にウォーキングは腕を大きく振ることで肩の筋肉の緊張をほぐすこともできるのでお勧めです。
⑤ストレスによる緊張
現代人は、さまざまなことで多くのストレスを感じやすい環境にあります。肉体的・精神的にストレスを受けると、自律神経の働きが活発となり、肩周辺の筋肉が緊張し肩こりの症状が現れます。連日ストレスを受け、筋肉の緊張状態が続く場合、肩こりが慢性化することがあります。
ストレスの原因が何かを考え、ストレス解消に向けて取り組みましょう。解消が難しくても、軽い運動や趣味の実践、生活習慣の改善、感情を表に出すなど、ストレスを発散することも大切です。
(2) 病気が原因
病気が原因となって肩こりが怒る場合があります。その場合、医療機関での診察・治療が必要となります。
①肩や関節の異常が原因の肩こり
五十肩(肩関節周りで炎症が生じる)や腱板断裂(上腕の骨と肩甲骨をつなぐ腱が切れてしまう)などがあります。
②首や肩の骨が原因の肩こり
頚椎症や椎間板ヘルニアなどの首や背中の病気の症状として肩こりが出現することがあります。
③内臓疾患が原因の肩こり
貧血・低血圧・高血圧などの症状があるときや、狭心症などの循環器系の病気、胃潰瘍などの消化器系の病気でも肩の痛みが出現します。その場合、肩こりだけではなく、頭痛や胸部の痛みなど他の症状も伴います。
腰痛とは
腰は、5つの腰椎という骨が積み重なって構成されており、腰痛の多くは腰椎に負担がかかることや障害が起きることで起こります。また、一言で腰痛と言っても、数日から数週間で軽快する急性的なものと、3か月以上続く慢性的なものに分けられます。
腰痛の原因

腰痛の原因は様々ですが、人は加齢に伴って、骨が弱くなったり、筋肉の柔軟性や収縮力を失っていき、腰椎の間にある椎間板はクッションの役目を失っていきます。 腰痛の原因は検査で約15%が特定できますが、残りの85%は原因がはっきりとは明らかになりません。原因が特定でき診断名がつくものとそうでないもの、具体的に3つの原因に分けて説明します。
(1) 骨・筋肉・椎間板などの障害
腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄、骨粗しょう症、骨折など、腰椎に異常が生じている病気が挙げられます。また、腰部に腫瘍ができていたり、脊椎が感染していても腰痛は生じます。
(2) 内臓・血管の病気によるもの
胃潰瘍や膵炎などの消化器系の病気や、尿路結石などの泌尿器系の病気、子宮筋腫など婦人科系の病気、解離性大動脈瘤などの循環器系の病気によるものが挙げられます。
(3) 原因が特定できない腰痛
重いものを持ち上げたり、長時間同じ姿勢でいる仕事をしていたり、長年悪い姿勢で過ごしてきたことで、腰や背中の筋肉が緊張し続けることが原因のもの、運動不足で腰まわりの筋力の低下していることが原因のもの、肥満などの生活習慣が原因のものが挙げられます。通常は生活習慣の改善やストレッチなどのセルフケアで短期間で軽快しますが、ストレスなどの心因性のものは長期化することがあります。
また、ぎっくり腰も腰周辺の筋肉や椎間板やじん帯などの損傷が原因ですが、検査ではどの部分を傷めているか特定できないため、対症療法で軽快するのを待ちます。
重いものを持ち上げたり、中腰での作業や長時間同じ姿勢でいるなど、仕事で腰に負担がかかっている場合は、なるべくその業務を避けるようにし、サポーターなどを利用し腰の安定性を高めましょう。
痛みが出現して短期間の急性的な腰痛には冷湿布など患部を冷やす処置が有効です。3か月以上続く慢性的な腰痛には、温湿布や長時間の入浴など患部をあたためる処置が有効となります。
腰痛があると、つい行動が制限されてしまいがちですが、常に横になって安静にしていると、体力や筋力が落ちて、さらに腰痛が悪化する場合がありますので、無理のない範囲で体を動かして筋力を維持し、腰まわりの血流をよくすることが大切です。
肩こりも腰痛も、検査をしてはっきりと原因が分かる場合は、医療機関で正しく治療を受けましょう。しかし、ほとんどの場合、検査をしても原因が明らかとならず、加齢や日常生活が痛みの原因となります。
自分の生活習慣を見直し改善していくこと、無理のない運動やストレッチで筋力の維持や血行を促進することで、肩こり・腰痛の予防・改善をしていきましょう。
この記事を書いた人:
ookawa

国立大学医歯薬学保健学研究科卒業、看護学修士号取得。
看護師国家資格、保健師国家資格取得。
現在は、2人の子どもを育てながら、看護学博士号取得のため勉強中です。